虚無感の克服に向けた研究
法政大大学院の浦田優子さんが「虚無感の克服に向けた実存的空虚の実証的検討」と題して、修士論文の骨子を発表しました
結論として、虚無感を克服するには①謙虚な姿勢=人間は万能ではない②世界と自己の関係を相互的ととらえて、他者に対して自分のできることを行動していく勇気③他者を自分と違う1人の人間として理解する深い愛ーの三つが大事だといいます。
「どんな時も人生には意味がある」というビクトール・フランクルの心理学をベースにした研究です。私は学生時代、虚無感や空虚感に悩んでいたころ、図書館でフランクルの「夜と霧」を読んで生きる力をもらいました。最近でも、自暴自棄になった時に、フランクルを読んで救われたという人の話を聴きました。今でもこの名著は多くの人に読まれています。
ユダヤ人でナチスに強制収容所に送られ、辛くも生き残ったフランクルのような鮮烈な体験を私たち戦後生まれの世代は持ち合わせていません。
そうしたなかで、浦田さんが虚無感の克服という、人間の存在を問う、簡単ではないテーマに取り組んでいることに敬意を表します。TAEによる質的研究を丁寧に進めて、インタビューから実感のこもった概念を導きだしたことも、TAEの勉強を細々と続けている私に勇気を与えてくれました。「他者への働きかけ」が大事という点で、無宗教的社会の日本でボランティア的な活動を続けている人たちへの励ましにもなります。
この研究は、1月28日にオンライン会議システムで開かれた「暗在性哲学と質的研究の会」で発表されました。量的研究に加えて、6人のインタビュー結果をTAEで分析してまとめました。