性犯罪とは、苦しみの解決
非行・犯罪の問題に取り組む臨床家ネットワークが、第1回のカンファレンスをオンラインで開きました。名古屋大の工藤晋平准教授が「性犯罪とアタッチメント」と題して講演しました。
それによると、性犯罪は本来、他者との間で和らげられるはずの苦しみ(しばしば自尊心の低下を招く心的な痛み)を和らげるための怒りを伴う慰めの行為だと言います。「欲求の満足」ではなく、「苦しみや痛みの解決」という理解を共有することが大切です。
発達の経験の中で愛着の問題があり、何らかの契機で犯罪に至ります。どういう状況で生起したのか、どの時にどうしたらいいかを聴くと、予防につながります。本人が気持ちを言えないことが多いので、支援者が「…ですかね」などと、半分共感しつつ、水を向けます。苦しかったことをできるだけ話してもらう体験が一定期間続く中で、だんだん、それを本人が実感できるようになることが目標。苦しかった時のことを話せるのが、その人には新しい経験であり、新しい解決方法の発見につながります。
支援者がある程度、実感をもって感じられるようになると、扱いやすくなります。情緒より、具体的事実について聴くと、「それは…ですね」と、心の動きを推測できるようになります。性犯罪は「恥」を伴うので、質問をするときは、「話せないことは話さなくていいですから」と、断る余地をつくることも肝心です。
現在、日本では、性犯罪防止のプログラムが広まっています。工藤さんは、強制力の働く刑務所以外ではプログラムは効果を挙げにくく、プログラムに乗せて、頭で考えたことを言わせるより、「苦しみへのアクセスと焦点化」が重要だと提言しました。
これは、本人や支援者が「実感」できるようになるという点で、フォーカシングにもかかわってきます。ジェンドリンが「フォーカシング」の第11章「傾聴の手引き」で書いた援助方法が役立ちそうに感じました。