「老いの思考法」山極寿一
世界的な霊長類学者の山極寿一さんが「老いの思考法」(文芸春秋刊)を出版した。
かつてのように老人たちが知っていることが若者にとって目新しかった時代と異なり、いまはインターネットの普及で、新しいことは若者たちのほうがよく知っている。山極さんはそんな時代には、情報(知識)ではなく、「知恵」こそが高齢者から次の世代への贈り物となる、と説く。
知恵とは、会話の仕方や作法、物事に臨むときの態度。心構え、気構え、体の構えーそういうマナーとかエチケット、心の持ち方といった身体知こそが高齢者の持つ宝だとする。
ボランティアなど縁側的な場で、いかに高齢者の経験的な知恵を他の世代にシェアしていくかという思考法こそが、人生と社会を豊かにする鍵になるという。
まさに「身体知」は、ジェンドリンの言うフェルトセンスだ。
山極さんは京都大学総長も務めた。オランウータンの研究者として知られる。