池見陽さんが最終講義
関西大学教授の池見陽さんが最終講義をしました。当日会場のほか、オンラインで全国から参加できました。
池見さんは、「生きているありさまを振り返ってみることが大切で、心理療法成功の鍵」と語りました。はっきりしない感じを言葉にすることで、意味するところに気づくのです。たとえば、「最近不安なんです」とクライエントが話していても、「不安というか、イライラするんです」「寂しかったんだ」などと変わっていきます。新たな気づきが生じる度に過去に違う意味がもたらされて、人生が推進されていきます。振り返る中で、「あの時はこうだった」と、過去の体験に新たな気づきが生じるのが、池見さんが言う「推進された だった」です。
池見さんは、最近わくわくすることを話しました。うまく言葉になっていないことを意味化しようとすることを、「フォーカシングα」と名付けたことを取り上げました。カウンセリングで成功するクライエントがやっている重要な内なる行為です。これをフォーカシングを教える方法である「フォーカシングβ」と区別しました。池見さんはジェンドリンの論文「人格変化の一理論」(1968年)の「四つの位相」を引用。①言葉になっていないが感じるものに焦点を合わせる(直接参照)②それを見ていると開ける(シフト)③全面的な適用(応用)④感じていることが変わる(内容変異)の流れがαです。
これまで心理療法について言われてきた「無意識を意識化する」という理論を池見さんはとらないと強調。「体験」→「表現」→「理解」の循環を、漢字フォーカシングやアニクロを例に解説しました。
さらに、だれがフォーカシングをしている?という視点から、エイジアン(アジア流)フォーカシングを説明しました。「フォーカシングをしようと思いすぎると、我が強くなってできない」と述べ、「雑念がフェルトセンスをもってくる。フェルトセンスは何を伝えに来たのかを聴いて、感謝する」方法を示しました。最後は「皆さんが健やかで幸せでありますように」という言葉で締めくくりました。