神経科学時代の心理療法 (1)

 「神経科学時代の心理療法 ●すべての心理支援者のためのガイド」(2026年、ピーター・アフォード著)を読んでいる。この本は、私のように神経科学を知らない心理学愛好者やセラピスト・カウンセラー向けに書かれている。とりわけ、ユージン・ジェンドリンが創始したフォーカシングを知っていると、わかりやすい。なぜなら、言葉になる前の体の感じである「フェルトセンス」にしばしば言及しているからだ。
 これは、ピーター・アフォードが、フォーカシング指向のセラピストであることによる。
 従来、心理療法で言われてきたことが、最新の神経科学ではこうだと説明されている、画期的な本だと言えよう。科学的な証明エビデンス重視の風潮にあって、傾聴やフォーカシング、人間性心理学の弱かった点が、神経科学から補強された。内容が詰まっている中で、まず、私が覚えておきたい点を抜粋してみよう。

 右半球は、ある状況に関するフェルトセンスを私たちにもたらしてくれます。ジェンドリンは背景にあるフェルトセンスに気づき、それを前景へと浮かび上がらせ、フェルトセンスを表現する言葉がやってくるプロセスを「フォーカシング」と名づけました(Gendlin,1981)。身体に注意を向けると、初めはぼんやりとしていたものに焦点が合っていくのです。(P116「情動に関わる脳の両半球」)

 セラピストは、クライエントが自身のフェルトセンスとよく相談するように促します(「たった今、このすべてが内側でどのように感じられるかに気づいてみてください」)。このことは、、クライエントが、セラピストと関わりながら、右脳と身体のアンサンブルにとどまり続ける力を発達させます。クライエントが安全か危険かを感じ、何が正しくて何が正しくないかを感じることによって、クライエントがポリヴェーガル理論でいう安全の中にとどまり、取り組むペースを保ち、プロセスを十分にコントロールできていると感じることができるのです。(p200、「面接室におけるトラウマと解離」)
*ポリヴェーガル理論とは、自律神経系の3つのレベルを持つモデル。「安全」が交感神経と副交感神経の最適なバランス、「危険」が交換神経の覚醒、「生命の脅威」が副交感神経のシャットダウン

 トラウマや解離は神経の統合を妨げる大きな要因である、多くの人は、心理療法の中に、未解決のトラウマーその多くが幼い頃からのものーを持ち込んでいます。統合が不十分な右脳は、治療関係の中で癒やされる必要があり、左半球はそれを単独で行うことができません。(P205、トラウマと解離「まとめ」)

 強迫性障害OCDの治療はそう簡単ではなく、感じていることや頭で考えたことを扱うことは一般的に逆効果となります。精神科医のジェフリー・シェヴァルツが考案した、もう一つのアプローチは、強迫衝動の内容(ドアに鍵をかけたかなど)よりもむしろ、脳のアンバランスさによって起こっている「私のOCD」として新しくとらえ直すよう教えることを主眼としています。そして、ただちに自分の心を少なくとも15分間は楽しんで取り組める活動に再び焦点づけるようにします(2003)。何かを考えるよりも、むしろ何かをすることが、ギアを変えることを助けるのです。(P218、「OCDのための心理療法」)