日本ジェンドリン学会「自分の言葉を持つ」
哲学者で心理学者でもあり、フォーカシングの創始者、ユージン・ジェンドリンの没後4年。日本ジェンドリン学会が5月5日、オンライン会議システムZoomで開かれました。「自分の言葉を持つ」をテーマに、4人が話題提供し、活発な質疑で盛り上がりました。
同学会事務局長の諸富祥彦さん(明治大教授)が「言葉にならないところでモノを考えるのが、たった一つの大事なことだと、ロジャーズもジェンドリンも言っている。マインドフルネスの次の来るものが、エッジや暗黙次元の思考。深い傾聴を伴う思考のトレーニングを大企業でもして広まってほしい」とあいさつしました、
同学会長の村里忠之さんは「自分の言葉を持つと、自分自身が支えられる。カウンセリングでクライエントが良くなる時でもある。自分がすべてに開かれている時、身体知からの言葉が立ち上がる」と述べました。さらに、「ジェンドリンのTAE(エッジで考える)は、自分の言葉を持つ作業であり、身体と言語、社会が相互作用する」とこの日のテーマに言及。逆に自分の言葉を持たないと、自分で自分を疎外する、と警鐘を鳴らしました。
哲学者のメルロ・ポンティやヴィトゲンシュタインからジェンドリンが影響を受けた流れを説明。参加者との討論では、現代の私たちは、外的基準による評価に気を取られすぎていること。意味のある沈黙でも、社会からは「無」ととらえられ、待ってもらえないこと。そんな中で、直感や感じることによって、深いところで元気になることが語られました。
末武康弘さん(法政大)や得丸智子さん(開智国際大)らも、「虐待を受けている子も母親を慕うのは、身体が愛情を注いでくれる母親を知っているから。完全なる母親は、生まれながらにして私たちの身体に組み込まれている。自分の言葉を信じることが、自分を見失わないことにつながる」などと、ジェンドリンの理論に触れながら自説を展開しました。討論を通じて、「顕在的」なものと「暗在的」なものという構造を、次の時代へ引き継いでいくことを再確認しました。その暗在=体験過程から新鮮な思考をすることで、私たちは人生をより「リアルに感じられる」という点でも一致しました。