フィーリング・ブッダ 仏教への序章
(デイビッド・ブレイジャー著、藤田一照訳、四季社、2004年)
私は先日、オンライン会議で著者のブレイジャーさんの話を聞く機会を得ました。その後、フランス在住の英国人である本人から直接、励ましのメッセージを受け取り、この本を毎日、少しずつ読み進めることができました。
彼が日本語版への序文で書いているように、私は「仏教とともに育ってきたものの、歳を重ねるにつれ、次第に仏教が生きる上での支えでなくなってしまった日本人」の一人です。
この本は、仏教の基本とされる「四聖諦(ししょうたい)」について、通説とはかなり異なる解釈をしています。通常は生、老、病、死の「苦」の原因は、感情・激情(仏教用語の「渇愛」)であるとして、瞑想や祈りなどの修行によってそれをなくすることで、最終目標の「涅槃」(ねはん)の境地に至るという解釈をします。しかし、彼は、感情や激情は苦に続く不可欠なステップであり、これと同一化する苦行的生活でも、無視する享楽的生活でもなく、うまくコントロールして、命の充実に向かって生きる力に活用するのが、釈迦のさとりだとします。伝統的な四聖諦解釈と抱き合わせのようになっている、人間が死後、生まれ変わるという輪廻転生説には基づかない仏教教理です。
釈尊を、ある重要な発見を成し遂げ、それを伝えようと望んだ、あくまでも普通の人間として描いています。これらの点に私はひかれました。感じていることと適当な距離をとり、そこから新たな体験的一歩を見つけるという点で、フォーカシングに通じると思いました。