日本人間性心理学会終わる
第41回日本人間性心理学会大会が9月10、11日、オンラインで開かれました。「回帰、そして飛翔」をテーマに、先の見えない今の時代に人間性心理学の原点に立ち帰り、未来へ飛び立つ発表、論議が繰り広げられました。
大会テーマに沿った準備委企画では、森川友子さん(九州産業大)ら6人が、PCAやフォーカシング、現象学、ゲシュタルト療法などそれぞれの立場から語りました。その人なりの肯定感や対話、わからないもの、本物志向、純粋性などが共通していたようです。
自主シンポジウムのうち、「ジェンドリン『プロセスモデル』ー実践哲学の息吹」では12月ごろ日本語訳の出版が予定されているジェンドリンの哲学の主著「プロセスモデル」について検討。訳者の末武康弘さん(法政大)は、その特質として①含意②推進③交差と継続を挙げました。「何かが生起する時に推進の起きる生起と起きない生起がある。セラピーでも家庭生活でも、含意が求めているような推進の方向の努力が大切」と述べました。同じく訳者の得丸智子さん(開智国際大)は①言語化、特に書くことで人が成長するというプロセス②言語化以前のところでも、お互いに響き合うような言語化は必要、と強調。「ジェンドリンが示唆しているものは、言語と行動、身体プロセスが一体となっているピラミッド構造。上のもの(言語や行動)は下のもの(身体プロセス)を含んでおり、身体プロセスは環境と絶えず相互作用して、響き合っている」と話しました。
口頭発表で、土江正司さん(心身教育研究所)は「マインドフル瞑想における体験的変化」について発表。マインドフルネスは脱中心化には有効だが、体験的変化まで求めるには、体験を受け止める「受」から、想像やイメージを浮かべる「想」への流れを絶って、体験にとどまることが必要、と仏教の用語を交えて提案しました。
酒井久実代さん(和洋女子大)は「インタラクティブ・フォーシング指向カウンセリングの効果」を検証。肯定的感情の増加、フォーカシング的態度の「注意」と「言語化」に有意差があったと説明しました。「二重の共感」のときに、聴き手が何となく感じているものを感じながら話をすることで、話し手の活気や元気が高められたと推測、「フェルトセンスを含むハンドル表現を一生懸命見つけようとするより、ボディセンスをただ感じて言葉で表すようがやりやすい」と言いました。