「フォーカシング」の表記いかに

 国際フォーカシング研究所(TIFI)の理事会が昨年末、TIFIのウェブサイトの「フォーカシング」という表記を2023年から「体験的(Experiential)フォーカシング」に改めたい、とコーディネーターのメーリングリストで提案したところ、異論が相次ぎました。このため、1月からの変更を実施しないこととしました。
 TIFIのサイトは英語表記で、メニューのグーグル自動翻訳をクリックすると世界の25言語で読めるようになっています。TIFIは「フォーカシング」を一般の意味と同じように訳されない方法として、提案したそうです。確かに、以前は「焦点合わせ」などと訳されて、興ざめしましたが、現在はかなり改善されています。
 今回、日本からは反対論ばかりでした。池見陽さん(関西大大学院教授)はジェンドリンの心理学や哲学の研究を基に、TIFIのフォーカシングの定義や説明について問題点を指摘し、世界のコーディネーターが納得いくような文案づくりを提起しました。
 フォーカシングはフェルトセンスに触れることで心理的な改善が図られるだけでなく、体験と象徴化(言語化など)の行ったり来たりの関係でもあります。脳科学では、フォーカシングは、感じている右脳と言語を司る左脳との相互作用ではないかという研究もあります。心理療法の分野だけでなく、もっと幅広い知見から定義、表記したほうが、フォーカシングが多くの人に知られることにつながるでしょう。単に「フォーカシング」を「体験的フォーカシング」に改めるという自動翻訳対策ではなく、世界の一線の研究者がチームを組んでTIFIのホームページの主要部分をバージョンアップする一歩になってほしいです。

TIFIのウェブサイト、日本語に自動翻訳されたページ