桜の季節、関東の寺巡り
桜の咲く季節、関東地方の寺を巡りました。
浅草寺には小学生時代、親に連れられて仲見世を歩いた記憶がありますが、約1400年もの歴史を持つとは知りませんでした。江戸時代に建てられた二天門から入った右側に浅草神社があることも小さな驚きでした。この神社にまつられているのは、浅草寺の本尊を発見、安置した3人だというのです。日本人の神仏習合を確かめた思いでした。
柴又帝釈天は、「男はつらいよ」の世界とますます重なりました。寅さん記念館と山田洋次ミュージアム、矢切の渡しには初めて訪れました。山田監督が東京近郊の候補地を歩き、日本人の心のふるさととして選んだ柴又のまち。山田監督の作品でまだ見ていない作品を見たいと思って帰った数日後、「キネマの神様」をテレビで見ました。
築地本願寺は、私の先祖が信仰した浄土真宗です。地下鉄駅の目の前にあり、古代インド様式と言われる変わった建物でした。日本の近代建築の草分けの伊東忠太と、西本願寺第22世宗主の大谷光瑞の出会いから生まれた遺産。本堂の床は畳ではなく、椅子が並ぶ。天井からはシャンデリアが下がる。椅子に座って建物内を見渡しながら、世界の宗教史に想像が膨らみました。
東京タワーに近い増上寺の広い境内でも、桜が満開でした。徳川家康ゆかりの秘仏「黒本尊」をまつるだけに、大河ドラマの「どうする家康」ブームもあってか、参拝者が引きも切りません。大殿の地下ロビーには、インドから贈られたという仏舎利(釈迦三尊の遺骨)が大切に展示されていました。
北鎌倉の建長寺と円覚寺はそれぞれ、鎌倉幕府の執権だった北条時頼と時宗が中国から高僧を招いて建てた寺です。元寇や権力争いなどの死者をとむらう気持ちが今も山間に漂っているようでした。臨済宗の禅寺です。オンライン座禅会のチラシも置いてありました。修行僧のいる境内で、自らの努力でできる座禅に心の支えを求めた武士の気性も感じました。
それに比べて、鎌倉大仏で知られる高徳院は、ずっと庶民的です。コロナ禍で中止されていた胎内拝観も再開されており、狭い階段を上り、大仏のお腹にある空洞は大にぎわい。作者や建立経緯などの詳しいことには、なぞが多いとか。表情は、だれからも好まれそうな柔和で悟った感じ。約770年間も風雨にさらされ、人々に守られてきた大仏に親しみを覚えました。