「『私』の言葉を紡ぐ フォーカシングとコラージュ」

 矢野キエさん著、「私」の言葉を紡ぐ フォーカシングとコラージュ(2021年2月、特定非営利活動法人ratik 発行)を読みました。
 コラージュは、のり付けの意味で、20世初め、ジョルジュ・ブラックやパブロ・ピカソによって創始されました。写真、布、新聞紙などのさまざまな素材を直接画面に貼り合わせる技法は、のちの画家たちに大きな影響を与えました。
 アートセラピーでも用いられました。日本では1990年前後に開発され、コラージュ療法として普及してきました。矢野さんは20数年前に出会い、すっかり引き込まれました。もともと美術は苦手な分野でしたが、「表現アートセラピー」の著者小野京子さんの励ましもあって、気にならなくなったそうです。
 この本は、池見陽さん(関西大)や三村尚彦さん(同)からフォーカシングやジェンドリン哲学を学んだ矢野さんが、理論的にもきちっとした背景を書きました。作るときは、「なんとなく」選んで、貼る感覚が大切です。論理的に考えて素材を選択するのではなく、言葉になる前の感じに触れる時間をとるのです。制作者と聴き手が作品を「味わう」時間をとることもポイントです。そこで「体験-表現-理解」の循環や、写真を介した交差が起きるようすを豊富な実践例を通して説明しています。
 10月9日(日)と10日(月祝)に札幌で開かれる矢野さんのワークショップが楽しみです。