ドライブ・マイ・カーを見て

 アカデミー賞など主な国際映画賞を総なめした「ドライブ・マイ・カー」を見た。
 物語の終盤、北海道赤平市でロケした場面が印象的だった。西島秀俊さんの演じる主人公が過去の自分について「深く自分を理解していなかった。(亡き)妻への理解も足りなかった」と気づく。このことが、相手役との対話の中で起きる。そして、主人公の生き方が変化して、劇中劇の大役を引き受ける。
 これは、ジェンドリンのいう「推進された過去(carried forward was)」だと、感じた。池見陽さんは著書「傾聴・心理臨床学アップデートとフォーカシング」で、「何かに気づく、というときには、新しいストーリーが創造されており、そのストーリーによって過去を振り返り、過去が新しい視点で見えてくるのである。体験が先に進み『推進』されたときに、過去が変わっているのである」と説明している。